THE AI Summit 2018 参加レポート (前編)

2018.11.28 NUL System Services Corporation

近年、AIをテーマにしたカンファレンスや展示会は様々な場所で開催されています。今回は9月19〜20日にSan Franciscoで開催されたThe AI Summit 2018に参加してまいりましたので、2回に分けてレポートします。(The AI Summit San Francisco公式サイト

THE AI Summitとは

The AI SummitのWebサイトでは「今度で3年目を迎えるこのサミットは、企業組織でAIを実用した結果や、現在の業務の生産性を大きく高めるような現実的なソリューションについて着目する、世界初の大規模な会議と展示会です。」とうたっています。
登壇者には大手企業の経営層や部門長が集まり、AIを活用したビジネス戦略や技術的な知見を共有します。 実際、今回はUber、Airbnb、Facebook、Netflixといった新興サービス企業だけでなく、銀行(ウェルズファーゴ、USバンク)、クレジットカード(マスターカード、キャピタルワン)、証券(モルガンスタンレー)、会計事務所(KPMG)、自動車(GM、テスラ)、製造業(ボーイング、ジョンソン&ジョンソン)、リテール(ウォルマート、eBay、7イレブン)、外食(TGIフライデーズ)、旅行(カールソンワゴンリートラベル)、通信(AT&T)、メディア(CNBC、ダウジョーンズ、フォーブズ)、エンタメ・スポーツ(ワーナーブラザーズ、49ers)といった企業のリーダーがビジネスセッションや技術セッションに登壇していました。 もちろん、AI関連のソリューションを提供するIT企業(IBM、マイクロソフト、AWS、Google、Oracle、Cisco、HPなどの大手、アクセンチュアやインフォシスなどのSIer/ITコンサル、その他ベンダー)も登壇するのですが、この手のカンファレンスには珍しく、5年先のビジネスばかり語るプレゼンや、営業色の強いプレゼンはほとんどありませんでした。 表面的な流行に惑わされたくない、着実な進歩を望む企業にとって価値のあるカンファレンスだと思います。

出展企業から見るトレンド

展示会場では、セッションにも登壇しているIT企業が自社のAI関連ソリューションやサービスを紹介していました。 設立から数年以上経過した企業による、既存ビジネス向けとしてある程度の採用実績を持ったソリューションやサービスということで選定もされているようで、投資家とスタートアップ企業のネットワーキングのような雰囲気はなく、落ち着いた空間でした。

展示は特にカテゴリー分けされていませんでしたが、おおまかに分類すると、「1. 自然言語処理関連(音声認識/チャットボット/その他)」、「2. RPAなどの業務処理自動化」、「3. 監査・コンプライアンス」、「 4. 機械学習SaaSプラットフォーム」、「5. データクレンジングやタグ付けなどの人的タスクサービス」、「6. AIやHPC向けのハードウェア系」、「7. その他」という構成でした。 その一方で、近年ディープラーニングで急激に進歩したとされるコンピュータービジョンによる物体検出や、産業IoTと組み合わせた異常検知・故障予測といった分野は少ない印象です。 これも最近のAI系カンファレンスの中では珍しいと思います。 これは、このイベントがIoTをテーマにしていないということももちろんありますが、カメラやセンサー類が設置済みで、そこから取得したデータが蓄積されている企業は現状それほど多くないということでもあるのでしょう。

デジタル変革とは最近よく耳にする言葉ですが、企業が今持っているデータ、今採取できるデータを活用し、業務の速度を上げて生産性を高めること、それが2018年現在において効果的なのではないでしょうか。

出展企業紹介 - 1

自然言語処理関連 (音声認識/チャットボット/その他)

以下のような企業が出展していました。

  • Artificial Solutions : 対話AIプラットフォーム、日本語対応
  • Luminoso : 自然言語分析、日本語対応
  • Inbenta : 自然言語による質問をもとに検索
  • CallMiner : 録音済み音声の認識とデータマイニングのSaaS
  • Cobalt Speech & Language : 音声認識・分析・音声合成
  • Interactions : 音声とチャットの両方に対応した対話AI
  • Humley : IBM WatsonやGoogleやMSのAI技術を活用した企業向けチャットボット

今回はInteractionsを紹介します。

Interactions 音声とチャットの両方に対応した対話AI

Interactions 音声とチャットの両方に対応した対話AI

サービス / 企業概要

カスタマーサポートやカスタマーセンターといった業務において、高品質な音声認識と自然言語処理を備えたバーチャルアシスタントが電話やチャットで応対することで、顧客対応のコストを上げずにスピードや質を向上させるというものです。 Hyatt(電話によるホテル予約の自動化)、Kiwi.com(航空券予約サイトのカスタマーサポート自動化)、自動車メーカーのSNS上での顧客対応支援などで使用実績があります。
Interactionsはマサチューセッツ州の企業です。創業は2004年で、10年以上存続しています。後期ステージに位置づけられます。

ポイント / 所感

よくある音声認識やチャットボットと比べて、会話の流れを柔軟に把握し、電話(音声対話)の途中でチャット(テキスト対話)に移行してもスムーズに続きの対話を行うことができるようです。また、精度が高く、エラー時に人間の担当者に引き継がなければならないケースが少ない(5%程度)とのことです。
Interactionsのソリューションは、2017年にCUSTOMER Magazineというメディアのコンタクトセンター技術賞を受賞していて、実績も多数ある点が安心できます。現在日本語に対応していないことが残念ですが、日本語音声を認識できるAT&Tラボの技術を2014年に買収しているため、今後の可能性に期待できます。

出展企業紹介 - 2

RPAなどの業務処理自動化

以下のような企業が出展していました。

  • UiPath : RPA
  • Blue Prism : RPA
  • WorkFusion : RPA
  • Dynamic AI : 業務コミュニケーションの自動化
  • Verne : テキストベースの業務プロセス自動化

今回はDynamic AIを紹介します。

Dynamic AI 顧客や従業員とのコミュニケーションをAIで自動化

Dynamic AI 顧客や従業員とのコミュニケーションをAIで自動化

サービス / 企業概要

顧客や従業員とのコミュニケーションが多く発生する業務、たとえばカスタマーサービスや営業、社内ITサポートや人事労務といった業務において、自然言語処理を備えたAIがメールやSkypeやSlackなどの応答を代行することで、似たような質問や要求に対するパターン的な応答を効率化できるというものです。これまでになかったような質問や要求が来たり、自動生成された応答の精度が低いと判定されたりした場合は、人間のオペレーターに振り分けられますが、その際の回答も蓄積され、AIの応答の精度向上に役立てられます。
Dynamic AIはカリフォルニア州ロサンゼルスの企業です。創業は2018年で、シードラウンドに位置づけられます。

ポイント / 所感

テキストベースのコミュニケーションに対するAI適用ということで、技術面ではチャットボットと共通する部分も多くあります。ただ、チャットボットのような新たなチャネルを追加することで人間のオペレーターを置き換えてしまうのではなく、メールに代表される既存コミュニケーションの裏側に組み込むことで、顧客の体験を損なわずに業務の自動化・効率化を達成しようとしているというところと、オペレーター側のトレーニングもあまり必要としないところが注目点です。
Dynamic AIは非常に若い企業のため、実績はまだほとんどありません。この企業というより、コミュニケーションの自動化という領域の、今後の展開に注目したいところです。たとえばGoogleもAIによるメールの返信提案や入力支援に取り組んでいますし、日本のスタートアップ企業でもメール返信をAIで効率化するサービスを提供しているところがあるようです。

後編は引き続き「3. 監査・コンプライアンス」、「4. 機械学習SaaSプラットフォーム」、「5. データクレンジングやタグ付けなどの人的タスクサービス」、「6. AIやHPC向けのハードウェア系」、「7. その他」の出展企業についてレポートいたします。